理由あって冬に出る
こんにちは、轢断死体は生きて轢かれたか死後に轢かれたかは法医学で分かると知って、それならカノウセイのあのトリックは無意味だなあと思った八久斗です。まあいいですけど。
今回紹介するのは似鳥鶏さんの「理由あって冬に出る」です。面白いペンネームですね。苗字は本名かしら。
学校の芸術棟に幽霊が出るらしい・・・そんな噂を晴らすべく、夜の学校に連れてこられる主人公の葉山君。そして現れる影。後を追うがなんと現場は密室で・・・興味を抱いた伊神先輩は葉山君を助手に安楽椅子探偵と洒落込みます。
そんな感じで幕を開けるミステリー。日常ミステリに分類してもいいのかな? ウィキペディアで日常ミステリ作家として書かれているのを見て読んだのですが。
率直な感想は、「久しぶりに良質のミステリに出会えた!」。特に1つ目の謎はトリックは単純だし、犯人の絞り込みも見事。そして解決したと思いきや新たなる謎が!という展開も興味を物語に引き込んでくれます。見取り図もちょくちょく出てきて親切。2つ目の謎のトリックはちょっとヒントが足りない上に無理がある気がしましたが、まあ悪くはない。
さらに終盤は怒涛の展開。あの本編に比べて異質だったプロローグがああいう形で関わってくるとは意外でした。そしてさらにそれがひっくり返るのも驚き。
最近ちょこちょこ日常の謎といわれる本を読んでいるのですが、なかなか良いのが無かったんですよね。どうも論理が飛躍してたり、読者に解かせる気無いだろっていうものばかりで。フェアアンフェアを厳しく言うつもりは無いですが、個人的にはミステリたるもの、ある程度読者にも推論の余地を与えなくちゃいけないと思うんですよね。解明のシーンで「へー、そうなのか」じゃなくて、「そういえばそうだった!」と思わせるような造りであるべきだと。つまり伏線を張れってことです。その点、この作品は良い出来です。特に1つ目の謎が本当に鮮やか。こういう作品がもっと増えてくれないかなと切に思います。
ただ、唯一にして致命的な欠点がエピローグ。個人的にはこれは蛇足だったと思います。好みによるんでしょうけど、これは無いほうが良かった。これによってリアリティーが一気に崩れてしまったんですよね。
何事も、山場と締めが全体の評価に繋がるというのを聞いたことがありますが、その意味では非常に惜しい作品でした。でもまあ、久々にミステリらしいミステリが読めたので若干甘くつけて星4つ。
本作がデビュー作ということで、今後の作品に期待したい作家さんです。続編もあるんですよね、これ。どうしようかな、買おうかな、ちょっと迷います。
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